司会者紹介

松本直樹
松本直樹
慶應義塾高等学校教諭 、慶應義塾湘南藤沢中・高等部講師 、NHK高校講座・地学(気象分野)講師
コンピュータ、インターネットを使った理科教育を実践し、その可能性を模索している。
日本天文学会教育委員、同ジュニアセッション実行委員、天文教育普及研究会関東支部長。
著書に「新しい高校地学の教科書 ブルーバックス―現代人のための高校理科」(共編著)、「新しい科学の教科書?-現代人のための中学理科」(共著)、「理科年表ジュニア」(共編著)など

実験ショー紹介

初心者研修コース「電気を作ろう, 音を出そう」
 宮内 主斗

エレキギター エレキギターが音を出すしくみを知っていますか。
 世の中にはいろいろなものがあり,しくみが分からない物がたくさんありますね。
考えてみれば,不思議だと思います。なんで,弾いただけの小さな音が大きくなるんでしょう。でも,ほと
んどの人は,音が出たときに不思議だとは思いません。出ないときに不思議だと思うのです。
 今日は,順番に実験をしながら,エレキギターが音を出すしくみを調
べてみましょう。
「でも,そんなの関係ねぇ。」などと言わないでください。これが分かる
と,発電所やカラオケや電話,
テレビやラジカセのしくみも分かってしまうというくらい,理解する価
値のあることなのです。
 使う実験道具は,エレキギター,リモコン,ラジカセ,携帯電話など
など。
 おやおや,実験道具らしい道具ではありませんね。
 しかし,そのようなものでも,科学の法則が使われている限りは,何
でも実験道具になるのです。
 手始めに,テレビのリモコンを考えてみましょう。
 リモコンから赤外線という光が出ているといいますが,そのことをど
うやって確かめたらよいでしょう。
 ただし,小学校で勉強する道具を使って。
 それをギターアンプにつなぐと,音が出ます。
 今日は,あるもので「電気が作られると,音がギターアンプから出る」ということを手がかりに実験して
いこうというわけです。
 ある物とは何か,そろそろ見当が付きましたか。
 これを読んで分からなくても結構です。話を聞いて,実験をやって確かめていけばよいのです。
 この後の展開の具体的な話は,ここでは触れません。
 実際に話を聞いて,その場で考えて欲しいからです。
 どんな実験で,どんな結果になるかは,見てのお楽しみ。
 一通り実験を楽しむと,私たちがいかにいろいろな場面で電気を作っているのかが分かります。
 電気を作らない生活は,今の日本では考えられない生活になってしまいます。
 では,実験を楽しみながら,いろいろな電気製品のしくみも見破っていきましょう。


初心者研修コース「実験! 着地ねこ」
 福武 剛

着地ネコ 着地ねこはどのような姿勢で放しても空中で回転して足を下にしておりてきます。色画用紙で作った着地ねこは胴体と胴体に直角に折りまげた足4 本でできています(図)。
 着地ねこはどのようにして足から着地できるのでしょうか?
 今日は皆さんといっしょに考えながら着地ねこの実験をしたいと思います。
 実験をする前に何を考えたらいいでしょうか?一番最初に何を知りたいのかはっきりさせる必要があります。そうです!知りたいこと(問題)をはっきりさせるわけです。

 今日は時間も短いので、知りたいことがたくさんあってもその中の一つだけを選んで問題にし、実験の内容もできるだけ少なくします。今日体験したことを基に、皆さんがいろいろ考えて実験して、着地ねこの性能をよくするためにはどうしたらいいかとか、着地ねこがうまく着地する仕組みを発見して欲しいと思います。


初心者研修コース「古代勾玉つくり 〜モース硬度へ アプローチ〜」
 網倉 聖子

まいきりの説明図 どこにでもころがっている石。手にとって観察すれば、いろんな種類があります。

 色 → 白色、茶色、黒色、灰色…
 形 → とがっている、丸い、平たい、へこんでいる…
 粒の大きさ → 細かい、粗い、バラバラ…
 混じりもの → いろんな種類がある、1種類…
 もろさ → 手で割れる、ぶつけると割れる、びくともしない…
 重さ → 水より軽い、鉄より重い…
 におい → におわない、ドロ臭い、イオウの臭い…

 いろんな形状の石の観察は、石の歴史や情報を私たちに伝えてくれます。石ができるためには数億年という長い年月が必要のものもあります。その情報が岩石の中に詰まっています。
モース硬度 また、石には、『かたさ』があるのを知っていますか?実は、爪で簡単に傷がつくやわらかい石から、鉄くぎでも傷がつかないかたい石まであります。鉱物の『かたさ』を調べるもののひとつにモース硬度というものがあります。19 世紀のはじめ、ドイツの鉱物学者フリードリッヒ・モースは、標準となる10 種類の鉱物を選び出し、かたさが未知の鉱物と互いに引っかきあうことで鉱物のかたさを調べる方法をつくり出しました。それがモース硬度です。同じ成分でできていても、石ができるときの環境、年数などでかたさはちがってきます。また形状が同じでも含まれる成分によってかたさはちがいます。
 古代人(縄文時代)は、石の中でもかたいヒスイや石英を使って勾玉をつくりました。鉄などの金属もない時代に、どうやってかたい石を加工していたのでしょうか?実はその方法は残されていません。
 これから紹介する方法も想像の作り方です。古代火おこしにも使用されていた舞きりで石を加工することで、石のかたさを体感してください。

※ 加工する際に注意すること:
石の粉が舞い散らないように、水やすりも石を水にぬらしながら削ってください。マスク着用をお勧めします。


鉄人コース「強・風が吹けば!?」
 月僧 秀弥

 風が吹くと何が起きるでしょう。台風や竜巻などの強い風を思い浮かべると,物がふきとぶことを思い浮かべますね。でも、風が吹くと飛ばされるだけではありません。力が働く場合もあるのです。この力はベルヌーイの定理で説明されます。このショーの中では風の力とベルヌーイの定理に注目し実験を進めていきます。
 実験は次のようになります。

【感じよう風の力】
 強い風を体験してみましょう。風が吹くと髪の毛はなびき,物が飛びます。今回使用する扇風機や送風機は結構強い風が出ますよ。

【いろいろな空中浮遊】
 風によってボールや風船が浮く様子を観察します。強い風でボールや風船は吹き飛んでしまいそうですが、意外にも吹き飛ばされず風の中に浮いています。風の様子も観察し、空気の流れについて考えます。また、他にもいくつかの物を浮かせます。

【風の引く力】
 紙に横から息を吹きかけると、紙が息を吹いた方に動きます。このように風が吹いた時に、物体が風の吹く方に引きつけられる様子が観察できます。巨大風船を用いた実験やメガホンとビーチボールを用いた実験などを通して,風が引く力を実感して欲しいと思います。そして、風速が早い方が引く力も大きくなることを実験を通して調べていきます。
 また,強い風によって物体が引き付けられたり、飛ばされたりする2つの現象を同時に見ることができる実験も行います。そして、「風が吹けば…」起きる現象について確認します。

【翼の働き】
 翼の上が丸く、下が平らになっている形によって飛行機には揚力が生じたり、ヨットが風に向かって進んだりします。このように、翼の形によって見られる現象を観察します。

【連結コップ】
 プラスチックコップを2つつないだものを準備します。この簡単なものを使って風の実験をいくつか行うことができます。家でも遊べる面白い実験器具だと思います。いろいろな動きを感じてみて下さい。

 実験自体は,そんなに変わった実験ではありません。そんな実験からもたくさんの科学を感じて欲しいと思っています。
 見ることが出来ない空気。でも,空気の存在は様々な現象から感じることができます。今回のショーでは,空気の存在や役割を感じることができる実験を行っていきます。いろいろな実験を通して,空気の流れを感じていきましょう。そして,思いがけない風の力を見ていきましょう。


鉄人コース「磁-Shock!! 磁力の不思議に迫る」 
 益田 孝彦

 今回の実験ショーは「磁力」がテーマ。このテーマに向かって、皆さんに参加してもらいます。参加というのは、ショーを見てもらいたいというだけの意味ではありません。皆さん一人ひとりが「見えないものが見えてくるような、なるほどそう言うことかぁ」と、うれしくなるくらい科学的な見方で、理由が分かっていってくれるといいなあと願っています。
 皆さんには「おや?」と一瞬思ってしまうことから楽しくショーに参加してもらうつもりです。
さて、いよいよ超強力磁石の登場です。その強さにビックリしてもらうのはもちろん、磁石につく、つかないに楽しく挑戦してくださいね。間違うことは全然怖いことではありません。そこで気づいたことが大切です。
 皆さんには、科学がとっても好きになるテーマを二つ用意しました。一つは、「鉄で出来た磁石」のお話です。博士の質問に答えていくうちに、皆さんは知らず知らずのうちに科学的な考え方が出来るようになるはずです。そしてもう一つは、「着磁・消磁」。この現象の理由が分かっていくとき皆さんはとても愉快な気持ちになってくれると思っています。
 さて今回は、鉄人特別バージョンです。皆さんには不思議な音を「聞いて」もらいます。音ですからもちろん耳で「聞く」のですけれども、きっと皆さんの頭の中には鉄の中身が、「見えて」くると信じています。
ショーの最後は、今はやりの「火を使わないマンションとか、オール電化」というような表現で紹介されるようなIH(アイ・エイチ;インダクション・ヒーティング)って何かを説明します。今日私のショーを見た人は、その簡単な原理をスッキリ分かってしまうことでしょう。そしてお別れはとっておきの「時間旅行」!!
 出来そうで出来ないタイムトラベル。私が皆さんを初めての時間旅行にご招待しますね。楽しみに待っていてください。

予定している内容は以下の項目です。
1. おや?
2. 超強力磁石(ネオジム磁石登場)。どれがつくかな?
3. 鉄って何の集まり?
4. 着磁・消磁
5. IHって何ジャー?
6. お別れ時間旅行
では皆さん。鉄人の会場でお会いしましょう!


鉄人コース「棒から始まる「てこ」のカラクリ進化論」 
 岡田 晃次

 皆さんは科学の鉄人の審査に来たつもりでしょうが、それはとんでもない間違いです。なぜなら、今日は私が皆さんの「敏感力」を調査しに来たからです。
 では、「敏感力」とは、何なのでしょうか?(いつぞやの総理大臣は「鈍感力」なんて言っていましたけど・・・)

 一見、複雑に思えるものや、ちょっとかけ離れていると思えるものでも、じっくりと観察すれば、それは単純なものの組み合わせだったり、少し使い方を工夫しているだけだったりするのです。そんなちょっとした違いなどを発見できる力が「敏感力」です。今日は「てこのカラクリ」をテーマに皆さんの「敏感力」をさらに磨き上げたいと思います。

てこ(1) 起(導入)「身の回りにあるすべてのものに進化の歴史あり」
 生命の進化の歴史をたどっていくと、すべては一つにつながっています。それと同じように身の回りにある人間が作り出したものすべてに、その進化の歴史があり、元をたどるとつながっているのです。それは「たった1本の棒」から始まったのです。

(2) 承(展開1)「棒に穴を開けたら、道具が生まれた・・・」
 たった1本の棒でも使い方を変えたら、すごいことが出来る! 
「てこ」の誕生です
 ・「てこ」のポイント
   1.動く方向を変えることができる
   2.小さい力で大きな力を作ることができる
さらに棒に穴を開けたら、なにができるようになるのでしょう
「てこ」を2本つなげてみると様々な道具が誕生していきます。
※ここら辺で、皆さんの「敏感力チェック」をしますよ。

(3) 転(展開2)「3本、4本とつないだら、形が生まれた・・・」
 2本であれだけすごいものが誕生したのだから3本、4本と増やしたら、もっとすごいことになりそうですね
 ※ここら辺の小道具にも注意してくださいね。「敏感力」ですよ。

(4) 結(まとめ)何が起こるかは本番のお楽しみ
 まとめとして、最後の「敏感力チェック」をします。次から次へと出てくるものをじっくりと観察してください。これまで考えてきた「てこのカラクリ」が形を変えて登場してきますよ。さてさて、どんなことが起こるやら・・・。お楽しみに


鉄人コース:「つばさを振り上げる筋肉を探せ!! ‐ 筋肉は二つで一つ‐ 」
 和田 重雄

ワシ 鳥はどうして飛べるのでしょうか? 空を飛んでいるワシの姿を見てください。な〜んと、体よりも大きく翼( つばさ)を広げています。
 鳥ってすごいですね。大きい翼を自由自在にあやつって大空を飛び回っています。どうやったら、自分の体を浮かせるように翼を動かせるのでしょうか。今回はその仕組みを探っていきましょう。

  1. 体の動きは、いったりきたりのくり返し。その原動力は筋肉が縮むこと。
    腕の筋肉  鳥が翼を動かす様子を想像してください。まず翼を上げます。次に降ろします。また上げて、また下げます。
     翼の上げ下げを繰り返さないと飛び続けることができません。人の腕の場合も繰り返しは同じです。腕を曲げたり伸ばしたりを繰り返しながら、腕を動かしています。
     ところで、腕を強く曲げると「力こぶ」ができますね。腕を曲げる筋肉(上腕( じょうわん) 二頭筋( にとうきん))が縮んだときにふくらんでできるものです。筋肉は縮むときに力を出して、身体のいろいろなところを動かしています。力こぶは、腕を曲げる筋肉が力を出している証拠といっても良いのです。そして、ほとんどの筋肉はつるまきバネのように、縮まるときにだけ力を出しています。そうすると、腕の曲げ伸ばしには2つの筋肉が必要となりますね。
  2. 翼を動かす筋肉はどこにある?
    カモメ  翼を上下に動かすには、翼を振り上げる筋肉と、振り下ろす筋肉が必要のはずです。それらの筋肉はどこにあるのでしょうか。カモメが飛んでいる写真を見ながら考えてみましょう。
     翼を下げる筋肉は翼を下に引っぱればよいから、おなか側にありそうです。では、翼を上げる筋肉はどこにあると思いますか?「背中」ですか?写真をよ〜く見てください。鳥の背中はそんなに大きくないですよ。本当にあるのでしょうか?
     外から見ただけでは分かりませんね。体の中を見たくなってしまいます。それには、解剖が必要となります。ニワトリを解剖しながら、翼を動かす筋肉を探していきましょう