実験ショーリスト
10枚のカードでの算数マジックの謎解きを楽しもう (野呂 茂樹)
空想の科学!? いえいえ空振の科学!! (益田 孝彦)
空気をさぐろう (矢野 礼美)
300年前の公開実験を再現!! (b山 幸也)

300年前の公開実験を再現!!

実験ショー紹介

「さぁ、今度は<魚が泳いでいる瓶>を入れて、真空ポンプで空気を抜いてみます。魚はどうなるでしょう??」
「ブリームさん、そんなことして魚は死なないのですか?」
「大丈夫。水の上の空気を抜いても、水の中の空気はなかなか抜けません。だから、魚は簡単には死にませんよ」
「じゃぁ、やってみましょうか?」

 今から、300 年前、1700 年代のはじめのころ。ここは英国ロンドンの社交場コーヒーハウス。そこに集まった紳士淑女の会話です。

 1600 年代英国の王認学会(ロイヤル・ソサエティ) では貴族たちの〈知的エンターテイメント= たのしみごと〉だった自然哲学(ナチュラル・フィロソフィー) がありました。貴族たちは、莫大なお金を参加費として払い広い劇場などで科学実験を楽しみました。オペラやマジックショー、演劇やスポーツを楽しむように科学実験も楽しんでいました。1800 年代の英国の王認会館(ロイヤル・インスティチューション)では、1000 人規模の少年少女のクリスマス講演の伝統もありました。そして1600 年代と1800 年代の間の1700 年代のヨーロッパやアメリカ植民地では紳士淑女、そして一般の人々を対象にした数10 人規模の公開科学実験講座が、自宅や喫茶店(コーヒーハウス)、集会場や街頭などで数多く開かれています。人々は楽しんでこれらの講座に参加したのです。

 当時、ロンドンでは市民を相手に科学実験講座を行っていた人は何人もいました。その頃の学校では、今の理科の授業はなく、科学実験は街で行われる科学実験講座に参加しないと体験できなかったのです。

 そんな講座をはじめたパイオニアはデザギュリエ(1683 〜 1744) という人です。そして、そのデザギュリエの講座を手伝っていたのが、先の会話でもでてきた実験器具職人のブリームです。

 この図は、ブリームの実験解説書についている図です。何だと思いますか?これが当時使われていた真空ポンプです。はじめて真空ポンプを使って実験をした人はゲーリケ(1602 〜 1686) です。ドイツのマグデブルク市の市長さんです。真空ポンプを使った科学講座はいまでもいろいろなところで行われていますが、そのほとんどがゲーリケの実験がもとになっています。そしてそれを、英国のボイル(1627 〜 1703) やフック(1635 〜 1703) 等が改良して出来たのがこの図の真空ポンプです。

 そのころの人たちにとって真空ポンプを使った公開実験は<最新の科学装置>による一大イベントでした。学者や大学教授はいうまでもなく、王様も貴族も一般市民も、男も女も、大人も子供も、みんながこの実験をみたがりました。当時行われていた公開科学実験は今では考えられないほどみんなをワクワクさせる知的でエキサイティングな出来事だったのです。

 1700 年代でも、まさに科学は、知的エンターテイメントでした。そんな1600 年代から1800 年代の科学がたのしくないわけはありません。科学はたのしかったのです。そこで、1700 年代の公開科学実験をブリームの解説書の順番にそってこの場で再現していきたいとおもいます。

 いまから、ここは300 年前のヨーロッパの街角です。

実験ショーのポイント

 次の絵をご覧ください。

 これは、ジョセフ・ライト(1734 〜 1797) という英国の肖像画家が描いたものです。

 何の絵だと思いますか?

 そうです、これは真空実験を行っている絵です。机の真ん中にあるのは、真空ポンプです。ガラスの容器の中には小鳥が入っています。真空ポンプでガラス容器の中の空気を抜いているため、中の小鳥は息も絶え絶えうずくまっています。この実験はブリームの解説書の通りに行われていたかはわかりませんが、机の上には、終ったと思われるいろんな実験の器具が置いてあります。それを取り囲んで10 人の男女がいます。

 この絵は、ブリームのような実験講師が裕福なお金持ちの家庭に呼ばれて、そこで、家族や友人の親子が集まって、真空実験を楽しんでいるところを描いたものです。ある研究者によれば、これは、進化論で有名なチャールズ・ダーウィンの祖父のエラズマス・ダーウィン(1731 〜 1802) の家で行われたものとも推定されています。こんな風に科学実験を楽しみごとにしていた時代があったと知っていてもいいでしょう。

 そして、現代の日本では、特別なお金持ちでなくても、誰でも科学実験を楽しむことができる時代になっています。スポーツや文学、演劇、旅行、豪華な食事も、300 年前までは一部の特権階級しか楽しめなかったことです。本日は、当時の科学実験を復元していきます。これから300 年前のヨーロッパの街中を訪れ、その場で彼らの声を聞き、彼らがみんなに見せた数々の実験に立ち会う事が出来るでしょう。

 そして、その実験はここだけではなく自宅に帰ってもできるように身近にあるものだけを使っています。自宅に帰って、今度はみなさんが科学講師になってください。


プロフィール

氏名:b山 幸也(かみやま ゆきや)
所属:Science Performance KASA

 1975 年10 月小樽生れ。学生時代には理学療法を学びつつ学習塾講師になる。学習塾時代には当時珍しい科学実験を授業に取込み、業界で注目される。その後、サイエンスパフォーマーとして全国で活動中。
 ショッピングセンターやお祭り等のイベントや、温泉ホテルでのロングラン公演にも呼ばれ、科学とは直接関係ない所でもサイエンスショーを実施している。

参考実施実績(代表例)
 ・小松空港開港50 周年オープニングステージ
 ・常陸宮御前サイエンスショー
 ・東日本大震災慰問公演(11 年3 月〜 4 月) 他